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河北新報の社説 208.3.11

河北新報の社説 208.3.11
「石原銀行」問題/税の偏在是正策も論議せよ
http://www.kahoku.co.jp/shasetsu/2008/03/20080311s01.htm



「石原銀行」問題/税の偏在是正策も論議せよ
 東京都が1000億円を出資して設立し、経営難に陥っている「新銀行東京」に対し、都が400億円の追加出資をする方針を決めた。巨額の税金投入に、財政難に悩む地方からはため息が漏れる。地方分権を進めて自治体間の税収偏在を是正しなければ、富裕自治体と地方の格差はさらに大きくなるだけだ。
 新銀行設立は、石原慎太郎都知事が2期目を目指した2003年の選挙公約。05年4月に開業し「石原銀行」とも呼ばれている。選挙当時は銀行の中小企業に対する貸し渋りが深刻で、新銀行は「無担保無保証」「新審査システムによる迅速融資」を売り物に業容を拡大した。

 しかし、景気回復で経営が安定した民間金融機関が積極的に中小企業融資に乗り出したこともあり、当初から赤字体質だった。特に、対象企業の財務データを入力して自動的に融資の審査をする「スコアリングモデル」を過信したため、毎年巨額の焦げ付きが生じた。
 都は先月、新たに400億円の税金を投入することを決め、都議会に予算案を提出。現在、審議が行われている。その過程で、ずさんな審査のため融資先約600社が経営破たんし、今年3月期末の累積赤字は資本金と同額に近い約1000億円に上ることも明らかになった。

 都議会では当然、早期撤退や石原知事の責任を追及する声が出ている。その議論の行方も注目されるが、何より驚かされたのは新銀行再建のため都が追加出資する400億円という額の大きさだ。これは、都が新年度から始める低所得者支援策の4年分に相当するという。地方税収入が5兆円を上回る超富裕自治体なればこそできる対応で、財政難の地方では考えられない措置である。
 昨年4月の東京都知事選で聞いた各候補の演説には軽いショックを受けた。3選された石原氏も次点だった浅野史郎氏(前宮城県知事)も「東京の経済の活性化」を公約にしていないのだ。各候補が話すのはもっぱら五輪問題や築地市場移転、外環道建設など税金を使う話で、都の財政が豊かであるのは当然という姿勢だった。

 住民の社会生活維持が難しい限界集落が点在し、市街地が寂れている県庁所在地や新幹線駅前もある東北などとは違い、東京だけは特別なのだ。
 参院選で自民党が地方の反乱に遭って大敗した後、地方対策として税収格差是正に取り組んだのは当然だった。都会に出た人が自分の故郷に納税できる「ふるさと納税」が議論されたのも、こうした格差が背景にあったのは間違いない。

 だが、税収格差是正策として新年度に実現するのは大企業の本社が多い三大都市圏の地方法人税を地方に回す措置だけだ。これは自治体間の財政調整にすぎず、本格的な是正を図るならば、税源移譲、地方分権を進める以外にない。もちろん国も地方も大胆な歳出削減に取り組むことが大前提になる。
 「石原銀行」の再建問題は、国と地方の在り方を考えさせるテーマでもある。
2008年03月11日火曜日

by kogurearts | 2008-03-11 15:33 | 情報収集